Background, author and explaination of the Art of War
Samurai Miyamoto Musashi's Book of 5 Rings, Japan's Art of War
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兵法の道二天一流と号し数年鍛錬の事初めて書物に顕さんと思ふ、時寛永二十年十月上旬の頃九州肥後の地岩戸山に上り天を拝し観音を礼し仏前に向ひ、生国播磨の武士新免武蔵守藤原玄信歳つもって六十、我若年の昔より兵法の道に心をかけ十三にして初めて勝負を為す、其の間新当流有間喜兵衛と云ふ兵法者に打勝ち、十六歳にして但馬国秋山と云ふ兵法者に打勝つ、二十一歳にして都に上り天下の兵法者に会ひ数度の勝負を決すといへども勝利を得ざると云ふことなし、其後国々所々に至り諸流の兵法者に行逢ひ六十余度まで勝負をなすといへ共一度も其利を失はず、其程歳十三より二十八九までの事なり、我三十を越て過去を思ひ見るに兵法に至極にして勝にはあらず、おのづから道の器用有て天理をはなれざる故か、又は他法の兵法不足なる所にや、其後尚も深き道理を得んと朝鍛夕錬して見れば自を兵法の道に合ふ事我五十歳の頃なり、夫より以来は尋ね入べき道なくして光陰ををくる、兵法の理にまかせて諸芸諸能の道を学べば万事に於て我に師匠なし、今此書を作ると云へ共仏法儒道の古語をもからず、軍記軍法の古きことをも用ひず、此一流の見たて実の心を顕す事天 道と観世音を鏡として十月十日の夜寅の一天に筆をとって書初るもの也

夫兵法と云ふ事武家の法たり将たる者は取分け此法を行ひ卒たる者も此法を知るべき事なり、今世の中に兵法の道慥に弁えたると云ふ武士なし、先づ道を顕はしてあるは仏法として人を助くる道、又儒道として文の道を糺し医者として諸病を治する道、或は歌道者として和歌の道を教へ或は数寄者弓法者、其外諸芸諸能までも思いゝゝに稽古し、心々に好くもなり、兵法の道には好く人まれなり、先づ武士は文武二道と云ひて二つの道を嗜む事是道也、縦ひ此道不器用なりとも武士たるものは己れ々々が分際程は兵法をば勤むべき事なり、大形武士の思ふ心を忖るに武は只死ぬると云ふ事を覚ゆる程の儀なり、死する道に於ては武士ばかりに限らず、出家にても女にても百姓以下に至る迄義理を思ひ恥を思ひ死するばきを思ひ切る事は其差別なきものなり、武士の兵法を行ふ道は何事に於ても人にすぐるゝ所を本とし、或は一身の切合に勝ち、或は数人の戦に勝ち、主君の為め、名を揚け身を立んと思ふ、是れ兵法の徳を以てなり、又世の中に兵法の道を習ひても実の時の役には立つまじきと思ふ心あるべし、其儀に於ては何時にても役に立やう稽古し万事に至り役に立やうに教ふ事、是 兵法の実の道也

 

兵法の道と云ふ事

漢土和朝までも此道を行ふものを兵法の達者と云ひ伝へたり、武士として此法を学ばずと云ふ事あるべからず、近来兵法者と称して世を渡る者あり是は剣術一通りの事なり、近年常陸国鹿島香取の社人ども明神の伝へとして流々を立て国々を廻り人に伝る事近き頃の儀なり、古より十能六芸とある内に利方と云ひて芸にわたると云へ共既に利方と云へば剣術一通りに限るべからず、剣術一篇の利までにては剣術も知りがたし、勿論兵の法には叶べからず、世の中を見るに諸芸を売物にしたて我身を売物のやうに思ひ、諸道具に付ても売物にこしらゆる心、花実の二つにして花より実の少き所なり、取分け此兵法の道に色をかざり花をさかせ術をてらひて或は一道場或は二道場など云て此道ををしへ、又此道を習ふて利を得んと思ふ事所謂なま兵法大疵の本とは是なるべし、凡人の世を渡る事士農工商とて四つの道あり、一つには農の道、農民は色々の農具を設け四季転変の心得暇なくして春秋をおくる事是農の道なり、二つには商の道、酒を造るものは夫々の道具を求め其善悪の利を得て渡世と為す、何れも其身々々にかせぎ其利を以て世を渡る事是商の道なり、三つには士の道、武士に 於ては様々の兵具を拵らえ、一々兵具の徳を弁へたらんこそ武士なるべけれ、兵具をも嗜まず其具々々の利をも覚えざる事武家のたしなみの浅きもの歟、四つには工の道、大工の道に於ては種々様々の道具を匠み拵らえ、其具々々を能つかひ覚え、矩を以て其差図を糺し、暇なく其わざをして世を渡るなり、是れ士農工商四つの道なり、今兵法を大工の道にたとへて云ひ顕はすなり、大工は大いにたくむと書くなれば兵法の道も大いなる匠みに依て大工に云なぞらへて書き顕はすなり、兵法を学ばんと思はゞ此書を思案して師は針、弟子は糸となって絶えず稽古あるべき事なり、

兵法の道大工に喩へたる事

大将は大工の頭領として天下の規矩をわきまへ其国の規矩を知る事頭領の道なり、大工の頭領は堂塔伽藍の墨金を覚え宮殿楼閣の差図を知り、人々をつかひ家を取建ること大工の頭領も武家の頭領も其義同じことなり、家を建るに木配りをする事直にして節もなく見つきの宜きを表の柱とし、少し節有りとも直につよきを裏の柱とし、縦ひ少し弱くとも節なき木の見様よきをば敷居鴨居障子とそれぞれにつかひ、節有りとも歪みたりともつよき木をば見分け能く吟味して使用するに於ては其家久しく崩れがたし、又材木の内にしても節多く歪みてよわきをば足代ともなし後には薪木とも為すべきことなり、頭領に於て大工をつかふ事其上中下を知り、或は床廻り或は戸障子、或は敷居鴨居天井以下それゞゝにつかひて、悪きには根太をはらせ尚悪きには楔を削らせ、人を見わけてつかへば其捗行て手ぎわ善きものなり、捗行き手ぎわよきと云所、ものごとに気をゆるさざること大勇なり、気の上中下を知ること、勇みを付ると云事、無体を知ると云ぐ事、斯様のこと共頭領の心持にある事なり、兵法の理亦斯のごとし、

兵法の道士卒たる者の事

士卒は恰も大工にして、手づから其道具を磨ぎ、いろゝゝのせめ道具をこしらえ、大工のはこに入て持ち、頭領の云付る所に従ひて柱虹梁をも手斧にて削り、床棚をも鉋にて削り、透しもの彫り物をもして能規矩を糺し、すみゝゝまでも手ぎわよく仕立る所大工の法なり、大工の業手に掛けてよく仕覚え、墨金をよく知れば後は頭領となる物なり、大工の嗜み宜きものは道具をば常に磨くこと肝要なり其道具を取て手棚、机、又は行灯、爼板、鍋の蓋までも達者にする処大工の業なり、士卒たるもの亦此ごとくなり、此道を学ばんと思はゞ書顕す所の条々能く心に入て吟味あるべし、

此兵法の書五巻に仕立つる事

五つの道をわかち一巻々々にしてその利を知らしめんがために地水火風空の五巻として書顕すなり、

第一地の巻 兵法の道の大体、我が一流の見立、剣術一通りにしては誠の道を得がたし、大いなる所より小き所を知り、浅きより深きに至る直になる道の地形を引均すによって初を地の巻と云ひ名付くなり、

第二水の巻 水を本として心を水になすなり、水は方円の器に従ひ一滴となり滄海となる、水に碧潭の色あり、清き所を用ゐて一流の事を此巻に書顕すなり、剣術一通りの理定かに見分け一人の敵に自由に勝ときは世界の人に皆勝つ所なり、一人に勝と云ふ心は千万の敵にも同意なり、将たるものゝ兵法小さきを大になすこと尺の金を以て大仏を建るに同じ、け様の儀こまやかには書分けがたし一を以て万を知ること兵法の利なり、一流の事此水の巻に書しるすなり、

第三火の巻 此巻に戦ひの事を書しるすなり、火は風に随て大小となりけやけき心有によって合戦の事を書なり、合戦の道一人と一人との戦ひも万人と万人との戦も同じ道なり、心を大きくなし意を小さくなして能く吟味して見るべし、大いなる所は見え安し、小き所は見えがたし、其仔細多人数の事は即坐にもとおりがたし、一人の事は心一つにて変る事早きによって小き所は却て知り得がたし、能吟味あるべし、此火の巻の事早き間の事なるによりて日々に手馴れたる常のことゝ思ひ心の替らぬ所兵法の肝要なり、しかるによって戦ひ勝負の所を火の巻に書顕すなり、

第四風の巻 此巻を風の巻としるすこと、我が一流の事にはあらず、世の中の兵法其流々の事を書のする所なり、風と云ふに於ては昔の風今の風、其家々の風などあれば世間の兵法其流々のしわざを定かに書顕はす是風の巻なり、他の事を能く知ずしては自のわきまへ成がたし、日々に此道をつとむると云ふ共心背きては其身は善しと思ふとも直ぐ成る所より見れば実の道にはあらず、実の道を究めざれば始め少しの心の歪みも後には大にゆがむものなり、物事に余りたるは足らざるに同じ、よく吟味すべし、他の兵法剣術ばかりと世に思ふこと尤なり、我兵法の利わざに於ては各別の儀なり、世間の兵法を知らしめん為に風の巻として他流の事を書顕すなり、

第五空の巻 此巻空を書顕すこと、既に空と云ふ時は何をか奥と云ひ口と云はん、道理を得ては道理をはなれ、兵法の道に自然と自由有て自然と奇特を得、時にあひては拍子を知り、おのづから打、おのづからあたる事是皆空の道なり、自然と実の道に入事を空の巻にして書とゞむるものなり、

 

此一流二刀と名くる事

二刀と云出す処武士は将卒ともに直に二刀を腰に付る役なり、昔は太刀刀と云ふ、今は刀脇差と云ふ、武士たるもの、此両刀を持つ事こまかに書顕すに及ばず、我朝に於て知るもしらぬも腰に帯る事武士の道なり、此二つの利を知らしめんために二刀一流と云なり、鑓長刀よりしては外の物と云ふて武具の内なり、一流の道初心の者に於て太刀刀両手に持て道を志し習ふ実の所なり、一命を捨る時は道具を残さず役に立てず腰に納めて死する事本意にあるべからず、然ども両手に物を持つ事左右ともに自由には叶ひがたし、太刀を片手にて取りならはせん為なり、鑓長刀大道具は是非に及ばず、刀脇差に於てはいづれも片手にて持つ道具なり、太刀を両手にて持ちてあしき事は第一馬上にて悪し、かけ走るとき悪し、沼、ふけ、石原、険しき道、人ごみに悪し、左に弓鑓を持ち其外何れの道具を持ても皆片手にて太刀を使ふものなれば、両手にて太刀を構ふること実の道にあらず、若し片手にて打ころしがたき時は両手にても打留るべき、手間の入る事にても有るべからず、先ず片手にて太刀を振りならはせん為に二刀として太刀を片手にて振り覚ゆる道なり、人毎に初て取時は太刀重く して振りまはしがたきものなれども、其は太刀に限らず万初めて取付る時は弓も弯きがたし長刀も振りがたし、何れも其道具々々に慣れては弓も力つよくなり、太刀も振りつけぬれば道の力を得てふりよくなる、太刀の道と云ふ事早く振るにあらず、第二水の巻にて見るべし、太刀は広き所にてふり脇差はせばき所にてふること先づ道の本意なり、此一流においては長きにても勝ち短きにてもかつに依て太刀の寸を定めず、何にても勝事を得る心一流の道なり、太刀一つ持たるよりも二つ持て善き所、多勢と一人して戦ふ時、又取り籠もり者などの時によきことあり、け様の儀今委しく書顕すに及ばず一を以て万をしるべし、兵法の道行ひ得ては一つも見えずと云ふ事なし、よくゝゝ吟味有べきなり、

兵法二刀の利を知る事

此道に於て太刀をふり得たる者を兵法者と世に言伝へたり、武芸の道に於て弓を能く射れば射手と云ひ、鉄砲を得たる者は鉄砲打と云ひ、鑓を遣ひ得ては鑓遣ひと云ひ、長刀を覚えては長刀つかひと云はんことなり、弓鉄砲長刀皆是武家の道具なれば何れも兵法の道なり、然れども太刀よりして兵法と云事道理なり、太刀の徳よりして世を治め身を治むる事なれば太刀は兵法の起る処なり、太刀の徳を得ては一人して十人に必ず勝つ事なり、一人にして十人に勝たば百人にして千人に勝ち、千人にして万人に勝つ、然るによって我が一流の兵法は一人も万人も同じ事にして武士の法を残らず兵法と云所以なり、道に於て儒者仏者数寄者乱舞者、是等の事は武士の道にてはなし、其道にあらずと云ふ共道を広く知れば物毎に出あふて通ぜざる事なく、何れも人間において我道を能研く事肝要なり、

兵法に武具の利を知ると云ふ事

武具の利をわきまゆるに何れの道具にても折にふれ時にしたがひ役に立つものなり、脇差は坐のせまき所、敵の身側によりて其利多し、太刀は何れの所にても大かた其の利あり、長刀は戦場にては鑓にをとる心あり、刀は先手なり長刀は後手なり、同じ位のまなびにしては刀は少しつよし、鑓長刀も場処により詰りたる所にては其利少し、取籠り者などにも然るべからず、只戦場の道具なるべし、合戦の場にしては肝要の道具なり、去れども唯坐敷にての利を覚え細やかに思ひ実の道を忘るゝに於ては役に立ちがたかるべし、弓は合戦の場にてかけひきにも出合ひ、鑓わき其外物きわゝゝにて早く取合するものなれば野合の合戦などに取分け宜きものなり、当世に於ては弓は申すに不及、諸芸花多くして実すくなし、さやうの芸能は肝要の時役に立がたし、其利少なし、城郭の内にしては鉄砲にしくことなし、野合などにても合戦のはじまらぬ内に其利多し、戦既に始まりては不足なるべし、弓の一つの徳は放つ矢人の目に見えて吉し、鉄砲の玉は目に見えざる処不足なり、此儀能く吟味ある可きことなり、馬の事強くこたへて癖なき事肝要なり、総て武具に付ては馬も大かたにありき、 刀脇差も大かたに切れ。鑓長刀も大かたにとほり、弓鉄砲も強くそこねざるやうに有べし、道具以下にも片分けて好く事あるべからず、余りたることは足ぬと同じ事なり、人真似をせずとも我身にしたがいひ武具は手合うやうに有べし、将卒ともに物に好き、物を嫌ふことあし、工夫肝要なり、

兵法の拍子の事

物毎につき拍子は有ものなれども取分け兵法の拍子鍛錬なくては及びがたき所なり、世の中の拍子人目に能く顕はれて有る事乱舞の道、伶人管弦の拍子など是みな能くあふ所の拍子なり、武芸の道弓を射鉄砲をはなし馬に乗る事までも拍子調子はあり、諸芸諸能に至ても拍子を背くことは有るべからず、又空成る事に於ても拍子はあり、武士の身の上にして奉公に身を仕上る拍子、仕下る拍子、はずのあふ拍子はずのちがふ拍子あり、或は商売の道分限に成る拍子、分限にても其絶る拍子、道々に付て皆拍子の相違ある事なり、物毎にさかゆる拍子、衰ふる拍子等よくゝゝ分別すべし、兵法の拍子に於て様々あることなり、先づ合ふ拍子を知て違う拍子をわきまへ、大小遅速の拍子の中にも当る拍子を知り、間の拍子を知り、背く拍子をわきまへずしては兵法確かならざる事なり、兵法の戦に其敵々の拍子を知り、敵の思ひよらざる拍子を以て勝つ所なり、何れの巻にも拍子の事を専ら書しるすなり、其書付の吟味をして能く鍛錬あるべきものなり、


右一流の兵法の道、朝なゝゝ夕なゝゝ勤め行ふによりて自ら広き心になりて、多分一分の兵法として世に伝るところ初て書き顕す事、地水火風空是れ五巻なり、我兵法を学ばんと思ふ人は道を行ふ法あり、第一によこしまなきことを思ふ、第二に道を鍛錬する処、第三に諸芸にさわるところ、第四に諸職の道を知ること、第五に物事の損得をわきまゆる事、第六に諸事目きゝをし覚ゆる事、第七に目に見えぬ処をさとる事、第八に僅かなる事にも気を付る事、第九に役に立ぬことをせざる事、大かた此の如き理を心にかけて兵法の道鍛錬すべきなり、此道に限て直なる処を広く見立ざれば兵法の達者とはなりがたし、此法をまなび得ては一身にして二十三十の敵にも負くべき道にあらず、先ず気に兵法を絶やさず直なる道を勤めては手にても打勝ち、目に見る事も人に勝ち、又鍛錬を以て惣体自由なれば身にても人に勝ち、又此道に慣れたる心なれば心を以ても人に勝つ、道を学びて此に至る時は如何にしても人に負くることある可らず、又大きなる兵法にしては善人を持事に勝ち、人数をつかふ事に勝ち、身を正しく行ふ道に勝ち、国を治むる事に勝ち、民を養なふ事に勝ち、世の礼法 を行なふに勝つ、何れの道に於ても人に負けざる所を知りて身を助け名を助くるところ是れ兵法の道なり


  正保二年五月十二日   新免宮本武蔵玄信

 

 


兵法二天一流の心、水を本として利方の法を行ふにより之を水の巻として一流の太刀筋此書に書顕すものなり、此道何れも細やかに心の侭には書分がたし、仮令ひ詞は続かずと云とも理は自から聞ゆべし、此書に書つけたる処一ことゝゝに一字々々にして思案すべし、大人との勝負のやうに書付たる所なり共、万人と万人との合戦の理に心得大いに見立るところ肝要なり、此道に限って少しなりとも道を見違へ道の迷ひありては悪道におつる者なり、此書付ばかりを見ては兵法の道に及び難し、此書に書付たるを我身に取りての書付と心得、見ると思はず習ふと思はず、贋物にせずして即ち我剣より見出したる理にして常に其身になりて能々工夫すべし、

兵法心持の事

兵法の道において心の持様は常の心にかはる事なかれ、常にも兵法の時にも少もかはらずして心を広く直にし、きつくひっぱらず少もたるまず、心のかたよらぬやう心を直中に置て心を静にゆるがせて、其ゆるぎの刹那もゆるぎやまぬやうに能々吟味すべし、静なるときも心は静かならず、如何に疾き時も心は少もはやからず、心は体につれず体は心につれず、心に用心して身には用心をせず、心の足らぬことなくして心を少しも余らせず、上の心はよわくとも底の心をつよく、心を人に見分けられざるやうにして小身なるものは心に大い成事を残らず知り、大身なるものは心に小きことをよく知りて、大身も小身も心を直にして我身の贔弱をせざる様に心持ち肝要なり、心のうち濁らず広くしてひろき処へ智恵を置べきなり、智恵も心もひたと研くこと専らなり、智恵を磨ぎ天下の理非をわきまへ、物事の善悪を知り、万の芸能其の道にわたり、世間の人に少しもだまされざる様にして後兵法の智恵成るなり、兵法の智恵に於て取分けちがふ事ある物なり、戦の場万事せわしき時なりとも兵法の道理を極め動きなき心能々吟味すべし、

兵法の身なりの事

身のなり、顔は俯むかず、仰がず、傾かず、ひずまず、目を見出さず、額に皺をよせず、眉間に皺をよせて目の玉の動かざるやうにして、瞬きをせず、目を少しすくめるやうにしてうらやかに見る顔、鼻すじ直にして、少し頤を出す心なり、首は後ろの筋を直に頸に力を入て両の肩をさげ、脊筋をろくに尻をいださず、膝より足の先まで力を入て、腰の屈まざる様に腹をはり、楔をしむると云て脇差の鞘に腹を持たせ、帯のくつろがざるやうに為す可しと云ふ教へあり、総て兵法の身において、常の身を兵法の身とし兵法の身を常の身とすること肝要なり、よくゝゝ吟味すべし、

兵法の眼付と云ふ事

眼の付け様は大きに広く付るなり、観見の二つあり、観の目つよく、見の目よわく、遠き所を近く見、近き所を遠く見ること兵法の専なり、敵の太刀を知り、聊か敵の太刀を見ずと云事兵法の大事なり、工夫あるべし、此眼付小さき兵法にも大なる兵法にも同じ事なり、目の玉動かずして両脇を見ること肝要なり、け様のこと急がしき時俄にわきまへがたし、此書付を覚え常住此眼付になりて、何事にも眼付のかはらざる処能々吟味有べきものなり

太刀の持様の事

太刀の取様は大ゆび人さしゆびを浮ける心にもち、丈高指はしめずゆるまず、薬指小指にて十分しむる心にして持なり、手の内にはくつろぎの有る事あしゝ、太刀を持と云て持たる心ばかりにては悪し敵を切物なりと思ひて太刀を取べし、敵を切時も手の内に変りなく、手の悚まざるやうに持べし、若し敵の太刀をはる事、受る事、あたる事、おさゆる事ありとも、大ゆび人さし指ばかりを少し変ふる心にて兎にも角にも切と思ひて太刀を取べし、試しものなど切時の手の内も兵法にて切時の手の内も、人を切ると云手の内に変る事なし、総じて太刀にても手にてもいつくと云事を嫌ふ、いつくは死る手なり、いつかざるは生る手なり、能く心付べきもの也

足づかいの事

足のはこびやうの事は爪先を少しうけて踵を強くふむべし、足の使ひやう時によりて大小遅速はありとも常にあゆむが如し、足に飛足、浮足、ふみすゆる足とて是三つ嫌ふ足なり、此道の大事に陰陽の足と云ふことあり是れ肝要なり、陰陽の足とは片足ばかり動かさぬ物なり、きる時、引時、受る時までも陰陽とて右左ゝゝとふむ足なり、返すゞゝ片足ふむことあるべからず、能々吟味すべきものなり

五方の構の事

五方の構は上段中段下段、右の脇、左の脇に構ゆる事是れ五方なり、構五つに分つと云へども皆人を切らん為めなり、身の構へ五つより外はなし、何れの構へなりとも構ふると思はずして切る事なりと思ふべし、構の大小はことにより利にしたがふべし、上中下は体のかまへなり、両脇はゆうの構なり、左右の構は上のつまりて脇一方つまりたる所などの構へなり、左右は所によりて分別有り、此道の大事に曰く構へのきわまりは中段と心得べし、中段は構への本意なり、兵法大きにして見よ、中段は大将の坐なり、大将についでは後四段の構なり、能く吟味すべし

太刀の道と云ふ事

太刀の道を知ると云は常に我差す刀を指二つにて振るときも、道筋よく知りては自由に振るものなり、太刀を早く振らんとするによって太刀の道逆ふて振りがたし、太刀はふり能き程に静にふる心なり、或は扇或は小刀など使ふやうに早く振らんと思ふ事悪しゝ、其れは小刀きざみと云ふて人の切れざるものなり、太刀を提げてはあげよき道へ上げ、横にふりては横にもどりよき道へもどし、如何にも大きに肱を延べて強くふること是太刀の道なり、我が兵法の五つの表を遣ひ覚ゆれば太刀の道定りて振りよき所なり、能々鍛錬すべし

五つの表第一の次第の事

第一の構は中段なり、太刀先を敵の顔に付て敵に行逢ふ時、敵の太刀打かくる時右へ太刀をはづして乗り、又敵打かゝる時切先返しにて打おとしたる太刀其のまゝおき、又敵の打かゝる時下より敵の手はる是れ第一なり、総別此五つの表書付ばかりにては合点なりがたし、五つの表の分は手に取て太刀の道稽古する所なり、此五つの太刀筋にて我太刀の道をも知り、如何やうにも敵の打太刀知るゝところなり、二刀の太刀の構へ五つより外にあらずとする所なり、吟味すべきなり

表第二の次第の事

第二の太刀は上段に構へ、敵打かくる所一度に敵を打なり、敵を打はづしたる太刀其まゝ置て、又敵のうつ所を下より掬ひ上げて打、今一つうつも同じ事なり、此表の内に於ては様々の心持、いろゝゝの拍子、此表の内を以て一流の鍛錬をすれば、五つの太刀の道こまやかに知て如何やうにも勝つところ有り、稽古すべきなり

表第三の次第の事

第三の構、太刀を下段に持ち提さげたる心にて敵の打かくる所を下より手を張るなり、手を張る処を又敵其の張る太刀を打落さんとする所を越す拍子にて、敵打たる後二の腕を横に切る心なり、下段にて敵の打所を一度に打とむる事なり、下段の構へを運ぶに早き時も遅き時も出合ふものなり、太刀を取て鍛錬あるべきなり

表第四の次第の事

第四の構、左の脇に横に構へて敵の打かくる手を下より張るべし、下より張るを敵打落さんとする其の手を張る心にて、その侭太刀を受け我が肩の上より筋かひに切るべし、是太刀の道なり、又敵の打かかる時も道をうけて勝つなり、能く吟味あるべし

表第五の次第の事

第五の次第太刀の構へ、我右の脇に横に構へて敵打かゝる所の位を受け、我太刀下の横より筋かひに上段に振上げ上より直に切べし、是も太刀の道能くしらしめんためなり、此表にて振つけぬれば重き太刀も自由にふらるゝなり、此五の表に於て細かに書付ること能はず、我家の太刀一通りの道を知り、又大形拍子をも覚え、敵の太刀を見分る事、先此五つにて不断手をからす処なり、敵と戦ふ中にも此太刀筋をからして敵の心を受け、いろゝゝの拍子にて如何やうにも勝つ所なり、能々分別すべし

有構無構の教への事

有構無構と云ふは元来太刀を構ふるという事あるべき事にあらず、然ども五方に置事あれば構へとも成べし、太刀は敵の縁により所により形気に随ひ、何れの方におきたりとも其敵切よき様に持心なり、上段も時に従ひ少し下る心なれば中段となり、中段もをりにより少し上れば上段となる、下段も折にふれ少し上れば中段となる、両脇のかまへも位により少し中へ出せば中段下段ともなる心なり、然るによって構はありて構はなきといふ理なり、先づ太刀を取ては何れにしてなりとも敵を切と云ふ心なり、若し敵のきる太刀を受る、張る当る、ねばる、さはるなど云ふ事あれどもみな敵を切る縁なりと心得べし、受ると思ひ、張ると思ひ、当ると思ひ、ねばると思ひ、さはると思ふによって切る事不足なるべし、何事も切る縁と思ふ事肝要なり、能々吟味すべし、兵法大きにして人数立と云ふも皆合戦に勝つ縁なり、能々工夫すべし

敵を打に一拍子の打の事

敵を打拍子に一拍子と云ひて敵にあたる程の位を得て、敵のわきまへぬ内に心に得て我身もうごかさず、心も付ず、如何にも早く直に打拍子なり、敵の太刀ひかん、はずさん、うたんと思ふ心のなき内を打拍子是一拍子なり、此拍子能く習ひ得て間の拍子を早く打事鍛錬すべし

二の越しの拍子の事

二の越の拍子、我打たんとするとき敵早く引き、早く張り退るやうなる時は、我打つと見せて敵の張手たるむ処を打ち、引てたるむ処を打つ、是二の越の打なり、此書付ばかりにては中々打得がたかるべし、教へ受けて忽ち合点のゆく処なり

無念無想の打と云ふ事

敵も打出さんとし我も打出さんと思ふ時、身も打身になり心も打心になって、手は何時となく空になり、唯心の命するまゝ知らず知らず打事、是れ無念無想とて一大事の折なり、此打度々出合ふ打なり、能々習ひ得て鍛錬有べき儀なり

流水の打と云ふ事

流水の打と云ふは敵合になりて競合ふ時、敵早くひかん、早くはづさん、早く太刀をはりのけんとする時、我身も心も大きになって、太刀を我身の後より如何程もゆるゝゝとよどみの有やうに大きにつよく打事なり、此打習ひ得ては慥に打よきものなり、敵の位を見分くること肝要なり

縁のあたりと云ふ事

我打出す時敵打留めん、はりのけんとする時、我打一つにしてあたまをも打ち、手をも打、足をも打つ、太刀の道一つを以て何れなりとも打所是縁の打なり、此打能く打ならふべし、何時も出合ふ打なり、細く打合て分別あるべき事なり

石火の当りと云ふ事

石火の当りは敵の太刀と我太刀と着合うほどにて、我太刀少しも上げずして如何にも強く打なり、是は足もつよく、身もつよく、手もつよく、三所をもって早く打べきなり、此打度々打習はずしては打がたし、よくゝゝ鍛錬すればつよく当るものなり

紅葉の打と云ふ事

紅葉の打、敵の太刀を打落し太刀とりはなす心なり、敵前に太刀を構へ、打ん、はらん、受けんと思ふ時、我打心は無念無想の打にても又石火の打にても、敵の太刀をつよく打ち、其侭後をはねる心にて切先下りに打てば敵の太刀必落るものなり、此打鍛錬すれば打おとすことやすし、能々稽古あるべし

太刀に代はる身と云ふ事

身に代はる太刀とも云べし、総て敵を打に太刀も身も一度には打ざるものなり、敵の打つ縁により身をば先に打身になり、太刀は身に介意わず打とことなり、若くは身は揺るがず太刀にて打事あれども、大かたは身を先へ打ち太刀を後より打ものなり、よくゝゝ吟味して打習ふべし

打と当ると云ふ事

打と云ふ事当ると云ふ事二つなり、打と云ふ心は何れの打にても重く受け慥に打なり、当るは行当る程の心にて強く当り忽ち敵の死する程にても是はあたるなり、打と云ふは心得て打ところなり、吟味すべし、敵の手にても足にても当ると云ふは先づ当るなり、当りて後を強く打ん為めなり、当るはさわる程の心、能く習ひ得ては各別の事なり、工夫すべし

しゅうこうの身と云ふ事

即ち秋猴の身なり、秋猴の身とは、手をいださぬ心なり、敵へ入身になりて少しも手を出さぬ心なり、敵の打前身を早く入る心なり、手を出さむと思へば必ず身は遠くのくものなるによって、総身を早くうつり入る心なり、手にて受合ひする程の間には身も入やすきものなり、能々吟味すべし

しっかうの入身と云ふ事

漆膠なり、此の入身は敵の身に我身能くつきてはなれぬ心なり、敵の身に入る時かしらをも付、身をも付、足をも付、つよく付く所なり人毎に顔足ははやく入れども身の退くものなり、敵の身へ我身をよくつけ、少しも身の間のなきやうに着くものなり、能々吟味有べし

たけくらべと云ふ事

たけくらべは丈くらべなり、身の丈を比ぶる心なり、敵へ入こむ時、我身の縮まざるやうにして足をものべ、腰をものべ、頭をものべて強くいる、敵の顔と顔とならべ、身のたけをくらぶるに比べかつと思ふ程に丈高くなってつよく入るところ肝要なり、能々工夫あるべし

ねばりをかくると云ふ事

粘をかくるなり、敵も打かけ我も太刀を打かくるに、敵受くる時我太刀敵の太刀に付てねばる心にして入也、ねばるは我太刀敵の太刀と離れがたき心、余り強くなき心に入べし、敵の太刀に付てねばりをかけ入る時は、いかほど静に入ても苦しからず、ねばると云ふ事と、もつるゝと云ふ事、ねばるはつよし、もつるゝはよわし、此事分別あるべし

身のあたりと云ふ事

身のあたりは敵のきわへ入込て身にて敵にあたる心なり、少し我顔をそばめ、我左の肩を出し敵のむねにあたるなり、我身をいかほどもつよくあたる事、行合ふ拍子にてはずむ心に入べし、此入る事入り習ひ得ては敵二間も三間もはねのくるほど強きものなり、敵死入るほどもあたるなり、よくゝゝ鍛錬あるべし

三つの受けの事

三つの受けと云ふは敵へ入込時、敵の打出す太刀を受るに我太刀にて敵の目を突くやうにして、敵の太刀を我右のかたへ引ながして受る事、又つき受と云ふて敵打太刀を敵の右の目を突くやうにして首をはさむ心につきかけて受る処、又敵の打時みじかき太刀にて入るに、受る太刀はさのみかまはず、我左の手にて敵のつらを突くやうにして入込む、是三つの受なり、左の手をにぎりて拳子にて面を突くやうに思ふべし、よくゝゝ鍛錬有べき者なり

おもてをさすと云ふ事

おもては面なり、面をさすと云は、敵と立合になりて敵の太刀と我太刀の間に敵の顔を我太刀先にてつく心なり、敵の顔をつく心あれば敵の身乗る者なり、敵を乗らするやうにすればいろゝゝ勝つ所の利あり、能々工夫すべし、戦のうちに敵の身乗る心ありては早や勝つ所なり、それに依て面をさすと云ふ事忘るべからず、兵法稽古のうちに此理鍛錬あるべきものなり

心をさすと云ふ事

心をさすと云ふは戦のうちに、上つまり脇つまりたる所などにて切る事入ることも成がたき時、敵をつく事敵の太刀をはずす心は、我太刀のむねを直に敵に見せて、太刀先ゆがまざるやうに引取って敵のむねをつく事なり、若し我くたびれたる時か、又刀のきれざる時などに此儀専ら用ゐる心なり、能々分別すべし

喝咄と云ふ事

喝咄と云ふは何れも我打かけ敵を追込む時、敵また打かへすやうなる時、下より敵を突くやうに上げて返へしにて打事、何れも早き拍子を以て喝咄と打、喝とつきあげ咄と打心なり、此拍子何時も打合のうちには専ら出合ふ事なり、喝咄の仕様、切先あぐる心にて敵を突くと思ひあぐると一度に打拍子、よくゝゝ稽古して吟味あるべき事なり

はり受と云ふ事

はり受と云ふは敵と打合時とたんゝゝゝと云ふ拍子になるに、敵の打所を我太刀にてはり合せ打なり、はり合する心はさのみきつくはるにあらず、又受るにあらず、敵の打太刀に応じて打太刀をはりて、はるよりはやく敵を打つ事なり、はるにて先をとり、打にて先をとる所肝要なり、はる拍子能く合へば敵何と強く打ても、少しはる心あれば太刀先も落ることにあらず、よく習ひ得て吟味あるべし

多敵の位の事

多敵のくらゐと云ふは一身にして多勢とたゝかふ時の事なり、我が刀脇差をぬきて左右へひろく太刀を横に捨て構ゆるなり、敵は四方よりかゝるとも一方へ追ひ廻す心なり、敵かゝる位ゐ前後を見分て先へ進むものにはやく行合ひ、大きに目をつけて敵打出す位を得て、右の太刀も左の太刀も一度にふりちがへて、行く太刀にて前の敵を切り、戻る太刀にて脇にすゝむ敵を切る心なり、太刀をふりちがへてまつこと悪し、早く両脇の位に構へ敵の出たる所をつよく切込み追ひくづして、其侭又た敵の出たる方へかゝりふりくづす心なり、如何にもして敵をひとへにうをつなぎに追ひなす心にしかけて敵の重なるを見ては其まゝ間をすかさずつよく払ひ込むべし、敵あひこむ所ひたと追ひ廻はしぬれば捗行きがたし、又敵の出るかたゝゝと思へば待つ心ありてはかゆきがたし、敵の拍子を受てくづるゝ処を知りて勝つ事なり、をりゝゝあひてをあまたよせ追込みつけて其心を得れば一人の敵も十人二十人の敵も心やすき事なり、能稽古して吟味あるべきなり

打あひの利の事

此打合の利と云ふ事にて兵法太刀にての勝利をわきまゆる所なりこまやかに書しるしがたし、よく稽古あって勝つ所をしるべきものなり、大かた兵法の実の道を現はす太刀なり、口伝あり

一つの打と云ふ事

此一つの打と云ふ心を以て慥に勝つ所を得る事なり、兵法よくまなばざれば心得がたし、此儀能鍛錬すれば兵法の心の自由になって思うまゝに勝つ道なり、よくゝゝ稽古すべし

直通の位といふ事

直通の心二刀一流の実の道を伝ゆる所なり、能々鍛錬して此兵法に身をなす事肝要あんり、口伝あり


右書付る所一流の剣術大形此巻に記し置く事なり、兵法太刀を取て人に勝つ所を覚ゆるは先づ五つの表を以て五法の構を知り、太刀の道を覚えて総体やわらかになり心のきゝ出て道の拍子をしり、自然と太刀も手さへて身も足も心の侭にほどけたる時に随ひ、一人に勝ち二人に勝ち、兵法の善悪を知る程に成り、此一書のうちを一ケ条一ケ条と稽古して敵と戦ひ次第々々に道の利を得て、絶えず心にかけ急ぐ心なくして折々手にふれては徳を覚え、何れの人とも打あひ、其心を知て千里の道も一足づゝはこぶなり、ゆるゝゝと思ひ此の法を行ふ事武士の役なりと心得て、今日は昨日の我に勝ち、あすは下手に勝ち、後は上手に勝つと思ひ、此書物のごとくにして少も脇の道へ心のゆかざるやうに思うべし、縦令何程の敵に打勝ても習ひにそむくことに於ては誠の道には有べからず、此理心に浮みては一身を以て数十人にも勝つ心のわきまへ有べし、然る上は剣術の智力にて大分一分の兵法をも得道すべし、千日の稽古を鍛とし万日の稽古を練とす、能くゝゝ吟味あるべきものなり

 

 


二刀一流の兵法、戦の事を火に思ひ取って戦ふ、勝負の事を火の巻として此巻に書顕すなり、先づ世間の人毎に兵法の理を小さく思ひなして、或は指先にて手首五寸三寸の利をしり、或は扇を取て肱より先の先後の勝を弁へ、又は竹刀などにて僅かの早き利を覚え、手をきかせ習ひ、足をきかせ習ひ少しの利の早き所を専らとする事なり、我兵法に於て数度の勝負に一命をかけて打合ひ、生死二つの理を分け刀の道を覚え、敵の打太刀の強弱を知り、刀の刃胸の道をわきまへ、敵を打果す所の鍛錬を得るに、小さき事弱き事思ひよらざる所なり、ことに六具固めてなどの利に小さき事思ひ出ることにあらず、されば命をはかりの打あひに於て一人して五人十人とも戦ひ、其勝つ道をたしかにみること我道の兵法なり、然るによって一人して十人にかち、千人を以て万人に勝つ道理何の差別あらんや、よくゝゝ吟味あるべし、去ながら常々の稽古のとき千人万人をあつめて此道為習ふ事なる事にあらず、独り太刀をとっても其敵々の智略をはかり、敵の強弱手たてを知り、兵法の智徳を以て万人に勝つ所を極め、此道の達者となり、我兵法の直道世界に於て誰か得ん、又は何れか極めむと慥に思ひ取て、朝鍛夕錬して研きをほせて後独り自由を得、おのづから奇特を得、通力不思議有るところ是れ兵として法を行ふ息なり

場の次第と云ふ事

場の位を見分くる所、場において日を負うと云ふ事有り、日を後方になして構ふるなり、若し所により日を後方にすることならざるときは、右の脇へ日をなすやうにすべし、座敷にてもあかりをうしろ右脇となすこと同前なり、後方の場つまらざるやうに左の場をくつろげ、右の場をつめて構へたき事なり、夜にても敵の見ゆる所にては、火を後方に負ひ、あかりを右脇にすること同前と心得て構ゆべきものなり、敵を瞰下すと云ふて少しも高き所にかまゆる様に心得べし、座敷にては上座を高き所と思ふべし、扨戦になりて敵を追まわすこと我左の方へ追廻す心、難所を敵の後ろにさせ、何れにても難所へ追掛ること肝要なり、難所にて敵に場を見せずと云ひて、敵に顔をふらせず油断なくせりつむる心なり、座敷にても敷居、鴨居、戸障子、椽など、又柱などの方へ追詰むるにても、場を見せずと云ふこと同前なり、何れも敵を追かくる方足場のわるき所、又は脇に構ひの有る所、何れも場の得を用ゐて、場の勝をうるといふ心専にして、能くゝゝ吟味して鍛錬あるべきものなり、

兵法の道を行ふものは、常に其道に心をつけて、座敷に居ても其座の損得を知り、座の道具に付けても其利を得、又外面にても山を見て、其山の利を知り、川を見ては其徳を覚え、沼ふけまでも兵法の利をを受る心肝要なり

三つの先と云ふ事

三つの先、一つは我方より敵へ掛る先、之をけんの先と云ふなり、又一つは敵より我方にかゝる時の先、是はたいの先と云ふなり、又一つは我もかゝり敵もかゝり合う時の先、体々の先と云ふ是三つの先なり、何れの戦初めにも此三つの先より外はなし、先の次第を以てはや勝事を得るものなれば、先と云ふ事兵法の第一なり、此先の仔細様々ありといへども、其時の理を利とし、敵の心を見、我兵法の智恵を以て勝事なれば、細やかに書分る事にあらず、


第一懸の先、我かゝらんと思ふ時静にして居り、俄かに早くかゝる先、上を強く早くし、底をのこす心の先、又我心を如何に強くしても足は常の足に少し早く敵のわきへ寄ると早く揉み立つる先、又心をはなって、初中後同じ事に敵を挫ぐ心にて、底までつよき心に勝、是れ何れも懸の先なり


第二待の先、敵我方へかゝりくる時少しも介意ず弱きやうに見せて、敵ちかくなりてつんと強くはなれて飛つくやうに見せて、敵のたるみを見て、直につよく勝つ事、これ一つの先、又敵かゝり来る時、我もなほ強くなって出る時、敵のかゝる拍子のかはる間を受け、そのまゝ勝を得る事是待の先の利なり


第三体々の先、敵早くかゝるには我静につよくかゝり、敵近くなりてつんと思ひ切る身にして敵の余裕の見ゆる時、直につよく勝つ、又敵静にかゝる時、我身浮きやかに少し早くかゝりて、敵近くなりて一揉み揉み、敵の色にしたがひ、強く勝つ事是体々の先なり、此儀こまかに書分けがたし、此書付を以て大略工夫あるべし、此の三つの先、時にしたがひ理にしたがひ、何時にても我方よりかゝる事にはあらざれども、同じくは我方より計りて敵を廻はしたき事なり、いづれも先の事兵法の智力を以て勝つ事を得る心、よくゝゝ鍛錬あるべし

枕をおさゆると云ふ事

枕をおさゆるとは、頭をあげさせずと云心なり、兵法勝負の道に限って人に我身をまわさして跡につく事悪し、いかにもして敵を自由にまわしたき事なり、然るによって敵も左様に思ひ我も其心あれども、人のすることをうけがはずしては叶ひがたし、兵法に敵の打ところを止め、つくところを抑へ、ふむ所をもぎはなしなどする事なり、枕を抑ゆると云ふは我が実の道を得て敵にかゝり合う時、敵何事にても思ふきざしをせぬ内に我是を知りて、敵のうつと云ふ其のうの字の頭を抑へて、後をさせざる心、是枕を抑ゆる心なり、縦令へば敵のかゝると云ふかの字を抑へ、とぶと云ふとの字の頭を抑へ、きると云ふきの字を抑ふる、みな以て同じ心なり、敵我にわざをなす事に付て、役に立ざる事をば敵に任せ、役にたつほどの事をばおさへて敵にさせぬやうにする所兵法の専なり、是も敵のすることをおさえんゝゝゝゝとする心後手なり、先我は何事にても道に任せてわざをなすうちに、敵もわざをせんと思ふ頭を抑へて、何事も役にたゝせず、敵をこなす所、是兵法の達者、鍛錬の故なり、枕を抑ふる事能くゝゝ吟味有べきなり

渡を越すと云ふ事

渡を越すと云ふは、縦令ば海を渡るに瀬渡と云所もあり、又は四十里五十里と云ふ長き海を越すをも渡りと云なり、人間の世を渡るにも、一代のうちには、渡を越すと云ふ所多かるべし、船路にして其渡の処を知り、船の位を知り、或は開きの風にたより、或は追風をも受け、若し風変りても二里三里は櫓櫂を以ても港につくと心得て、船を乗取り渡を越すことなり、其心を得て、人の世を渡るにも一大事にかけて渡を越すと思ふ心あるべし、兵法戦のうちにも、渡を越すこと肝要なり、敵の位をうけ、我が身の達者を覚え、其理を以て渡を越すことよき船頭の、海路を越すに同じ、渡を越ては又心やすき所なり、渡を越と云ふ事、敵によわみを着け、我身先になりて大形早や勝所なり、大小の兵法の上にも、渡を越すと云ふ心肝要なり、能々吟味あるべし

景気を知ると云ふ事

景気を見ると云は、大分の兵法にしては、敵の栄え衰へを知り相手の人数の心を知り、其場の位をうけ、敵の景気を能く見分け、我人数何と仕かけ、此兵法の理にて、慥に勝と云所を呑込みて、先の位を知て戦ふ所なり、又一分の兵法も、敵の流れを弁え、相手の人がらを見うけ、人の強き弱き所を見つけ、敵の気色にちがふ事をしかけ、敵のめりかりを知り、其間の拍子を知りて、先をしかくる所肝要なり、物事の景気と云事は、我が智力強ければ必ず見ゆる所なり、兵法自由の身になりては、敵の心を能く計て勝つ道多かるべき事なり、工夫有べし

けんをふむと云ふ事

剣をふむと云ふ心は、兵法に専ら用ゆる義なり、先づ大きなる兵法にしては敵、弓鉄砲にてもはなしかくる時、我は其後にかゝらんとするによって、敵は更に又弓をつがひ鉄砲に薬をこめて撃出すゆゑ、こみ入がたし、我は敵の弓鉄砲を放つ内に早くかゝるべしと云ふ心なり、早くかゝれば矢も番ふ暇なく、鉄砲をも撃出すいとま無く、敵何事をも施し得ざる心なり、物事を敵のしかくると、其侭其の理を受て敵のする事をふみつけて勝つ心なり、又一分の兵法も敵の打出す太刀の後へ打てばとたんゝゝゝとなりて、捗ゆかざる所なり、敵の打出す太刀は足にてふみ付ける心にして、打出す所を勝つ、二度目を敵の打得ざるやうにすべし、ふむと云ふは足にはかぎるべからず、身にてもふみ、心にてもふみ、勿論太刀にてもふみ付て二の目を敵によくさせざるやうに心得べし、是れ則ち物事の先の心なり、敵と一度にといひて行当る心にてはなし、其まゝ後につく心なり、能くゝゝ吟味あるべし

くづれを知ると云ふ事

崩と云ふ事は物毎にあるものなり、其家のくづるゝ、身のくずるゝ、敵のくづるゝ事も、時いたり拍子ちがひになりてくづるゝ所なり、大分の兵法にても、敵のくづるゝ拍子を得て、其間を抜さぬやう立追につる事肝要なり、崩るゝ所の息をぬかしては立かへす所あるべし、又一分の兵法にても、戦ふ中に敵の拍子ちがひて崩れめのつくものなり、其程を油断すれば又立帰り、新らしくなりては捗ゆかざる所なり、其崩れ目につき、敵の顔たて直さゞるやうに慥に追かくる所肝要なり、追かくるは直につよき心なり、敵たてかへさざるやうに打放すものなり、打放すと云ふ事能く分別あるべし、はなれざればしたるき心有り、工夫すべきものなり

敵になると云ふ事

敵に成と云ふは我身を敵になりかはりて思ふべきと云ふべきと云ふことなり、世の中を見るに盗みなどして、家のうちへ取籠るやうなるものをも、外よりはなかゝゝに強く思ひ做すものなり、左れど又盗賊の身になりて思へば、今世の中の人をみな相手として遁げ籠りてせんかたなき心なり、取籠るものは雉子なり、之を外より取囲み、打入らんとするものは鷹なり、能々工夫あるべし、敵を強くのみ思ひ做して恐るるは不覚なり、敵の心になりて見れば、却て我を恐れ居ることなるべし、大きなる兵法にしても、敵といへば強く思ひて大事にかくるものなり、よき人数をもち兵法の道理をよく知り、敵に勝つと云所を能受けては気遣ひすべき道にあらず、一分の兵法も敵になりて思ふべし兵法よく心得て道理つよく、其道達者なるものにあひては、必ず負くると思ふ所なり、能々吟味すべし

四手をはなすと云ふ事

四手をはなすとは敵もわれも同じ心に張合う心になると思はゞ、其侭心をすてゝ別の利にて勝つ事を云ふなり、大分の兵法にしても、四手の心にあれば捗ゆかず、人の先づる事なり、早く心をすてゝ敵の思はざる利にて勝つ事専らなり、又一分の兵法にても、四手になると思はゞ、其侭心をかへて敵の位を得て、各別変りたる利を以て、勝をわきまゆる事肝要なり、能々分別すべし

かげを動かすと云ふ事

陰をうごかすと云は、敵の心のみえわかぬ時の事なり、大分の兵法にしても、何とも敵の位の見わけざる時は、我かたより強くしかくる様に見せて、敵の手だてを見るものなり、手だてを見ては、各別の利にて勝つ事やすき所なり、又一分の兵法にしても敵後方に太刀を構へ、脇に構へたるやうなる時ふっと打んとすれば、敵思ふ心を必ず其の太刀に現はすものなり、現はれ知るゝに於ては、其のまゝ利を受けて慥かに勝つこと知るべきものなり、油断すれば拍子ぬくるものなり、能々吟味あるべし

影を抑ふると云ふ事

影を抑ふると云ふは、敵のかたより仕掛くる心のみえたる時の事なり、大分の兵法にしては、敵のわざをせんとする所を抑ふると云て、我方より其利を抑ふる所を、敵に強くみすれば、強きに抑えられて、敵の心かはる事なり、我も心をちがへて、空なる心より先を仕掛て勝つ所なり、一分の兵法にしても、敵の起るつよき気ざしを、利の拍子を以て止めさせ、止みたる拍子に、我勝利を受て先を仕掛くるものなり、能々工夫あるべし

移らかすと云ふ事

移らかすと云ふは物毎にあるものなり、或は眠りなどもうつり、或は欠伸などのうつるものなり、時のうつるもあり、大分の兵法にして、敵うはきにして事を急ぐ心の見ゆる時は、少しも其に介意はざるやうにして、如何にもゆるりとなりて見すれば、敵も我気にうつされて其気ざしたるむものなり、其移りたると思ふとき、我方より空の心にして、早く強くしかけて勝利を得るものなり、一分の兵法にしても我身も心もゆるりとして、敵のたるみの間を受て強く早く先にしかけ勝つ所専なり、又よわりと云て是に似たる事あり、一つは退屈の心、一つは浮つく心、一つは弱くなる心、能々工夫あるべし

むかつかすると云ふ事

むかつかすると云は物毎にあり一つにはきはどき心、二つには無理なる心、三つには思はざる心、よく吟味あるべし大分の兵法にしても、敵の心をむかつかする事肝要なり、敵の思はざる所へ仕掛けて、敵の心のきはまらざる内に、我利を以て先をしかけて勝つ事肝要なり、又一分の兵法にしても、初ゆるりと見せて、俄につよくかゝり、敵の心のはたらきに随ひ息をぬかさず、其侭利をうけて勝をわきまゆる事肝要なり、能くゝゝ吟味あるべし

おびやかすと云ふ事

おびゆると云ふこと物毎にあることなり思ひよらぬ事におびゆる心なり、大分の兵法にしても敵を刧やかす事眼前の事のみにあらず、或は物の声にてもおびやかし、或は小を大にしておびやかし、又片わきよりふっとおびやかすこと是れおびゆる所なり、其おびゆる拍子を得て、其利を以て勝べし、一分の兵法にしても身を以ておびやかし、太刀を以ておびやかし、声を以ておびやかし、敵の心になきことをふっと仕かけておびゆる所の利をうけて、そのまま勝を得ること肝要なり、能々吟味あるべし

まぶるゝと云ふ事

まぶるゝと云は敵我手近くなりて、互につよく張あひて、捗ゆかざると見れば、其侭敵と一つにまぶれあひて、まぶれあひたる其内に、利を以て勝つ事肝要なり、大分小分の兵法にも敵味方互に心はりあふて、勝負つかざるときはそのまゝ敵にまぶれて互にわけなくなるやうにして其うちの徳を得、そのうちの勝を知り、つよく勝つ事専らなり、よくゝゝ吟味有べし

かどにさはると云ふ事

角にさはると云ふは物毎につよき物を押すに其まゝ直には押込みがたきものなり、大分の兵法にしても、敵の人数を見て張り出強き処の角にあたりてその利を得べし、角のめるに随ひ、惣ても皆のめる心あり、其のめる内にも角々に心得て勝利を得る事肝要なり、一分の兵法にしても敵の体の角にいたみをつけて体少しにてもよわくなり崩るゝ体になりては勝つ事やすきものなり、此事よくゝゝ吟味すべし

うろめかすと云ふ事

うろめかすと云は、敵にたしかなる心を持せざるやうにする処なり、大分の兵法にしても、戦の場に於て敵の心を計り我兵法の智力を以て、敵の心を迷はせて兎の斯のと思はせ、晩し早しと思はせ、敵うろめく心に成る拍子を得て、慥に勝つ所をわきまゆるなり、又一分の兵法にして時に当りて、いろゝゝのわざをしかけ、或は打とみせ、或はつくとみせ、又は入り込むと思はせ、敵のうろめく気ざしを得て、自由に勝つ所是れ戦の専なり、能くゝゝ吟味あるべし

三つの声と云ふ事

三つの声とは初中後の声と云て、三つに掛けわくる声なり、所により声をかくると云ふ事専なり、声は勢ひなるによりて、火事などにも掛け、風波にもかくるものなり、声は又勢力を見する物なり、大分の兵法にしても、戦の初めにかくる声は如何程も嵩をかけて掛くべく、戦ふ間の声は調子を引きて底より出る声にてかゝり、勝て後あとに大きに強くかくる声、是三つの声なり、又一分の兵法にしても敵を動かさむ為めの打とみせて、頭よりゑいと云声をかけ、声の後より太刀を打出すものなり、是を先後の声と云ふ、太刀と一度に大きに声をかくることなし、若し戦のうちに掛ることあれば、是は拍子にのる声にて、引てかくるなり、能々吟味あるべし

まぎるゝと云ふ事

まぎるゝと云は、大分の戦ひにしては人数を互に立て合戦のつよき時まぎるゝと云ふて、敵の一方へ掛り、敵くづるゝと見ば捨て又強き方にかゝる、大かたつゞらをりにかゝる心なり、一分の兵法にして敵大勢よするにも亦此心専なり、一方を追崩しては又一方つよき方にかゝり、敵の拍子を得て、能き拍子に左右とつゞたをりの心に思ひて、敵の色を見合て掛るものなり、其敵の位を得、打通るに於ては少しも引心なく強く勝つ利なり、一分の入身の時も、敵のつよきにはその心あり、まぎるゝと云ふ事、一足もひく事をしらず、まぎれ行と云ふ心、能々分別すべし

ひしぐと云ふ事

ひしぐと云ふは譬へば敵を弱く見なして、我強めになって挫ぐと云ふ事専らなり、大分の兵法にしても敵に人数の位を見こなされ、又は大勢なりとも敵うろめきて弱みつく所なれば、頭よりかさをかけて挫ぐ心なり、挫ぐ事弱ければもりかへす事有り、手の中に握って挫ぐ心能々分別すべし、又一分の兵法の時も、我手に足らざるもの、又は敵の拍子違ひて、すさりめに成る時少しも息おくれず目を見合せざる様になし、真直に挫ぎつくる事肝要なり、能々吟味有べし

山海の変りと云ふ事

山海の心と云は、戦ふ中に同じ事を度々することあしき所なり、同じ事二度は是非に及ばず三度とするは甚だ悪し、敵にわざをしかくるに一度にて成らざる時は今一つもせきかけて、其の利に及ばずば今度は別に異りたる事をふっと仕掛け、尚それにても捗ゆかずば又別の事を仕かくべし、然るによって敵山と思はゞ海としかけ、海と思はば山としかくる心兵法の道なり、能々吟味あるべきことなり

底をぬくと云ふ事

底をぬくと云は敵と戦ふに其道の利を以て上は勝とみゆれども心をたへさゞるに依て、上にてはまけ下の心はまけぬ事あり、其儀に於ては我俄かにかはりたる心に成て敵の心をたやし、底よりまくる心に敵のなる処を見る事専なり、此そこを抜く事太刀にてもぬき、又身にてもぬき、心にてもぬく所有り、一道には弁ゆべからず、底より崩れたるは我心のこすに及ばず、左なきときは残す心なり、残す心あれば敵崩れがたき事なり、大分小分の兵法にしても底をぬく所、能くゝゝ鍛錬あるべし

新になると云ふ事

新になるとは敵と戦ふ時、縺るゝ心になって捗ゆかざる時、我気を振り捨て物毎を新らしく初むる心になり、其拍子を受て勝を弁ゆる所なり、新に成る事は何時も敵と我れきしむ心になると思はゝ其侭心を更へて各別の利を以て勝つべきなり、大分の兵法においても、新になると云所わきまゆる事肝要なり、兵法の智力にては忽ち見ゆる所なり、よくゝゝ吟味あるべし

鼠頭牛首と云ふ事

鼠頭牛首と云ふは敵と戦ふ中に、互に細かなる所を思ひ合て縺るゝ心になる時、兵法の道をつねに鼠頭牛首ゝゝゝゝと思ひて、如何にも細かなる中に、俄に大きなる心にして、大を小にかゆる事、兵法一つの心だてなり、平生の人の心も、鼠頭牛首と思ふべき所武士の肝心なり、兵法大分小分にしても、此心を離るべからず、此事よくゝゝ吟味あるべきものなり

将卒を知ると云ふ事

将卒を知るとは何れも戦に及ぶ時我思ふ道に至てはたえず此法を行ひ、兵法智力を得て、我が敵たるものをば皆我卒となりと思ひ取てこなしたきやうになすべしと心得、敵を自由にまわさんとおもふ所、我は将なり、敵は卒なり、工夫あるべし

束をはなすと云ふ事

つかをはなすと云ふにいろゝゝある事なり、無刀にて勝つ心あり、又太刀にてかたざる心あり、さまゞゝ心のゆく所書付る能はず、能く能く鍛錬すべし

岩石の身と云ふ事

いわおの身と云ふは、兵法を得道して忽ち岩石の如くになって、万事あたらざる所、動かざる所、口伝

右書付る処、一流剣術の要にして絶えず思ひよる事のみ云ひ現はし置ものなり、今始めて此利を書記すものなれば後先と書紛るゝ心有て細やかには云分がたし、乍去此道を学ぶべき人の為めには心記しに成べきものなり、我若年より以来、兵法の道に心を掛て、剣術一通りのことにも、手をからし身をからし、いろゝゝさまゞゝの心に成り、他の流々をも尋ね見るに、或は口にて云ひかこつけ、或は手にて細かなる業をして、人目に善きやうに見すると云ふとも一つも実の心にあるべからず、勿論斯様の事、しならひても、身をきかせならひ心をきかせつくる事を思へども、みな是道の病となりて、後々までも失せがたくして兵法の直道世に朽ちて道の廃るもとゐなり、剣術実の道になりて敵と戦ひ勝つ事此法聊か変る事なるべからず、我兵法の智力を得て、直なる所を行ふに於ては、勝つ事うたがひ有べからざるものなり

 


兵法他流の道を知る事

他の兵法の流々を書付け風の巻として此巻に著はす所なり、他流の道を知らずしては我一流の道慥に弁えがたし、他の兵法を尋ね見るに、大なる太刀を取て、強き事を専にして其業をなすなかれ、或は小太刀と云ひて、短き太刀を以て道を勤むるなかれ、或は太刀数多くたくみ、太刀の構を以て、表と云ひ奥と云ひて道を伝ゆる流もあり、是皆実の道にあらざる事此巻の奥に慥かに書顕し、善悪理非を知らするなり、我一流の道理各別の義なり、他の流は芸に渡て身すぎのためにして色をかざり花をさかせ、売物に拵えたるによって、実の道にあらざる事か、又世の中の兵法剣術ばかり小さく見立て、太刀を振り習ひ、身をきかせて、手のかゝる所を以て勝事を弁えたるものか、何れも慥かなる道にあらず、他流の不足あるところ、一々此書に書顕すなり、よくゝゝ吟味して、二刀一流の利をわきまゆるべきものなり
 

他流に大なる太刀を持つ事

他に大なる太刀を好む流あり、我兵法よりして是を弱き流と見たつるなり、其故は、他の兵法如何様にも人に勝と云理を知らずして、太刀の長きを得とし、敵相遠き所より勝ちたきと思ふに依て、長き太刀好む心あるべし、是れ世の中に云ふ、一寸手まさりとて兵法知らぬものゝ沙汰なり、然るによって、兵法の利なくして長きを以て遠く勝んとす、それは心の弱きゆゑなるによって、弱き流と見立るなり、若し敵相近く組合うほどの時は、太刀の長きほど打事も利かず、太刀のもとをりすくなり、太刀をにゝして小脇差手ふりの人に劣るものなり、長き太刀好む身にしては、その云わけは有べきなれども、それは其身ひとりの理なり、世の中の実の道より見るときは道理なきことなり、長き太刀持ずして短かき太刀にては必ず負くべき事か、或は其場により上下脇などのつまりたる所、或は脇差ばかりの座にても、長を好む心兵法の疑ひとて悪しき心なり、人により小刀なるものも有り、其身により長刀さすことならざる身も有り、昔より大は小をかなへると云へばむざと長きを嫌ふにはあらず、長きとかたよる心を嫌ふ儀なり、大分の兵法にして長き太刀は大人数なり、短かきは小人数なり、小人数と大人数にて合戦はんるまじきものか、少人数にて勝つこそ兵法の徳なれ、昔も少人数にて大人数に勝たる例多し、我一流に於て左様にかたすきせばき心嫌ふ事なり、能く能く吟味あるべし、

他流において強みの太刀と云ふ事

太刀に強き太刀弱き太刀と云ふことは有べからず、つよき心にてふる太刀はあらきものなり、荒きばかりにては勝がたし、又強き太刀と云て人を切る時、無理につよくきらんとすれば切れざるものなり、試験し物など切る心にも、余り強く切らんとする事悪し、誰に於ても敵と切合うに弱く切らん強く切らんと思ふものなし、唯人を切殺さんと思ふ時はつよき心もあらず、勿論よわき心にもあらず、敵の死ぬる程と思ふ儀なり、若はつよみの太刀にて、人の太刀強くはれば張り余りて必ず悪きなり、人の太刀につよく当れば、我太刀も折れ摧くることあり、然るによって、つよみの太刀など云事なきことなり、大分の兵法にしても強き人数を持、合戦に於て強く勝むと思へば敵もつよき人をもち、戦もつよくせんと思ふ、其は何れも同じ事なり、物毎に勝と云事道理なくしては勝つ事あたはず、我道に於ては少しも無理なる事を思はず、兵法の智力を以て如何やうにも勝つことを得る心なり、能くゝゝ工夫あるべし

 

他流に短き太刀を用ゆる事

みじかき太刀ばかりにて勝んと思ふこと実の道にあらず、昔より太刀、刀と云ふて長きと短きと云事をあらはし置なり、世の中に強力なるものは大きなる太刀をも軽く振るなれば無理に短かきを好む可にあらず、その故は長きを好みて鑓長刀をも持ものなり、短き太刀を以て人のふる太刀の透間を切ん、飛入ん、捉まむなどゝ思ふ心あしし、又透間をねろう所万事後手に見え縺るゝと云ふ心有て嫌う事なり、若は短き物にて敵へ入り込まん、取らんとする事大敵の中にて役に立たざる心なり、短かきにして得たるものは大勢をも切払はん、自由に飛ばん、狂はんと思ふとも皆受太刀といふ物になりて、取紛るゝ心あって慥かなる道にてはなきことなり、同くは我身はつよく直にして人を追回し、人に飛びはねさせ、人のうろめくやうに仕かけて慥に勝つ所を専とする道なり、大分の兵法に於ても其利有り、同くば人数嵩を以て敵を即時に攻潰す心兵法の専らなり、世の中の人の物をしならふ事、平生も受けつ、かはいつ、抜けつ、潜りつしならへば心道に引かれて人に廻はさるゝ心あり、兵法の道直に正しき所なれば、正理を以て人を追廻はし、人を随がゆる心肝要なり、能々吟味有るべし

他流に太刀かず多き事

太刀の数あまたにして人に伝ること、道を売物にしたてゝ太刀数多く知りたると初心のものに深く思はせん為なるべし、兵法に嫌う心なり、其故は人を切る事色々ありと思ふ心迷ひなり、世の中に於て人を切ること変はる道なし、知るものも知らざるものも、女童子も打叩き切ると云ふ道は多く無き所なり、若し変はりては突ぞ薙ぞと云ふ外はなし、先づ敵を切る所の道なれば他に数多あるべき道理あらず、されども場により事にしたがひ上脇など詰りたる処にては太刀のつかえざるやうにもつ道あり、其は五法とて五の構へはあるべきものなり、それより外に取付て手を捩ぢ或は身をひねりて飛起きなど様々のことして人を切る事実の道にあらず、人を切るにねぢて切られず、拈りてきられず、飛てきられず、ひらいてきられず、凡是等の事は曽て役に立たざる事なり、我兵法においては身なりも心も直にして敵をひつませ、緩ませて敵の心のねぢ、ひねる処を勝つ事肝要なり、能くゝゝ吟味あるべし

他流に太刀の構を用ゆる事

太刀の構を専にすることひが事なり、世の中に構のあらんことは敵のなきときの事なるべし、其仔細は昔よりの例ひ今の世の法などゝして法例を立る事は勝負の道にはあるべからず、その相手のあしきやうに匠むことなり、物毎に構ゆると云ふ事はゆるかぬ処を用ゐる心なり、或は城を構る、或は陣を構ゆるなどは人に仕掛けられてもつよく動かぬ心是常の義なり、兵法勝負の道に於ては何事も先手先手と心掛る事なり、構ると云心は先手をまつ心なり、能くゝゝ工夫あるべし、兵法勝負の道人の構をうごかせ、敵の心になき事をしかけ、或は敵をうろめかせ、或はむかつかせ、又はおびやかし、敵のまぎるゝ処の拍子の利をうけて勝つ事なれば、かまゆると云後手の心を嫌ふなり、然るゆゑに我道に有構無構と云て、構は有てかまえはなきと云所なり、大分の兵法にも敵の人数の多少をおぼえ、其戦場の所をうけ、我人数の位を知り、其徳を得て人数を立て戦を始むる事是合戦の専なり、人に先を仕かけられたる時と我人に仕かくる時とは其利不利一倍もかはる心也、太刀を能構へ敵の太刀を能く受け能く張ると覚ゆるは鑓長太刀を以て柵に振りたると同じ、敵を討つ時は又柵木を抜て鑓長太刀に使ふ程の心なり、能々吟味あるべき事なり、

他流に目付といふ事

目付と云ふて其流により敵の太刀に目を付るもあり、又は手に目を付る流も有り、或は顔に目をつけ或は足などに目を付るも有り、其の如く取わけて目を付んとしては、まぎるゝ心有て兵法の病と云物になるなり、其仔細は鞠をける人は鞠によく目を付ねども、自在にけること、物になるゝと云所あればたしかに目に見るに及ばず、又ほうかなどするものゝ術にも其道になれては戸びらを鼻先にたて、刀を幾腰も玉などにとる事、是れ皆慥に目を付くることはなけれども、不断手になれぬれば自づから見ゆる処なり、兵法の道に於てもその敵と仕馴れ、人の軽重を覚え、道を行ひ得ては太刀の遠近遅速までも皆見ゆる義なり、兵法の目付は大かた其人の心に付たる眼なり、此故に我一流にては観見の二つの見やうあることなり、観の目つよくして敵の心を見、其場の位ゐを見、大きに目を付て其戦の景気を見、其折節の強弱を見て正しく勝つ事を得る事専らなり、大小兵法に於て小さく目を付る事なし、前にも記すごとく細かに少さく目を付るに依て、大き成事を取忘れ迷ふ心出来て慥か成る勝ちをぬかすものなり、此理能々吟味して鍛錬有べきなり、

他流に足つかひ有事

足の踏みやうに浮足、飛足、はぬる足、踏しむる足、からす足などゝ云て色々左足をふむ事有り、是れみな我兵法より見ては不足に思ふ処なり、浮足をひらふ事、其故は戦に成りては必ず足の浮きたがるものなれば如何にも慥にふむ道なり、又た飛足を好まざることは飛足はとぶ起りあって飛で居つく心有り、いく飛も飛ぶと云ふ理の無きによって飛足悪し、又はぬる足、はぬると云ふ心にて捗の行かぬるものなり、踏つむる足、待の足とて殊に嫌ふ事なり、其他からす足色々左足などあり、或は沼ふけ、或は山川、石原、細道にても敵と切合ふものなれば、所により飛はぬる事もならず、左足のふまれざる所有ものなり、我兵法に於て足にかはることなし、常の道をあゆむが如し、敵の拍子に随ひ急ぐ時、静なる時の身の位を得て足らず余らず、足のしどろになきやうに有べきなり、大分の兵法にしても足を運ぶこと肝要なり、其故は敵の心を知らずむざと早くかかれば拍子ちがひ勝ちがたきものなり、又足ふみ静にてはうろめき有て崩るゝと云ふ所を見付ずして、勝つ事をぬかして早く勝負つけ得ざるものなり、うろめき崩るゝ場を見わけて、少しも敵をくつろがせざるやうに勝つ事肝要なり、能々鍛錬あるべし、

他の兵法に早きを用ゆること

兵法の早きと云所実の道にあらず、早きと云事は物毎の拍子の間にあはするに依て早き遅きと云心なり、其道上手になりては早く見えざるものなり、仮令へば人にはや道と云ふて四十里五十里行ものも有り、是も朝より暮まで早く走るにてはなし、道の不勘成るものは一日走るも一向に捗ゆかざるものなり、乱舞の道に上手の歌ふ謡に下手の付けて謡へばおくるゝ心あって急がしきものなり、又鼓太鼓に老松をうつに静かなる位ゐなれども下手は是にもおくれ先たつ心有り、高砂は急なる位なれども、早きと云ふこと悪し、早きはこけると云ひて間にあはず、勿論おそきもあしゝ、是も上手のすることはゆるゝゝとみえて、間のぬけざる所なり、諸事しつけたる者のすることは急がしく見えざるものなり、此鍛を以て道の理をしるべし、殊に兵法の道に於て早きと云ふこと悪し、是れもその仔細は所によりて沼ふけなどにては身足共に早く行がたし、太刀はいよゝゝ早く切る事なし、早く切らんとすれば、扇小刀のやうにはあらず、ちゃくと切れば少しも切れざるものなり、よくゝゝ分別すべし、大分の兵法にしても早く急ぐ心わるし、枕を押ゆると云心にては少しも遅きことはなき事なり、又人のむざと早きことなどには背くと云て静になり人につかざる処肝要なり、此心の工夫鍛錬あるべき事なり、

他流に奥表と云う事

兵法のことに於て何れを表と云ひ何れを奥といはん、芸により事にふれて極意秘伝などゝ云て奥口あれども、敵と打合時の理においては表にて戦ひ裏を以て切ると云ふ事はあらず、我兵法の教へ様は初て道を学ぶ人には其業の成りよき所をさせ習はせ、合点のはやく行く理を先に教へ、心の及び難き事をば其人の心をほどくる所を見分て次第次第に深き所の理を後に教る心なり、去れども大かたはその事に対したる事などを覚えさすによって奥口と云ふ所なき事なり、されば世の中に山の奥を尋るに猶行かんと思へば又口へ出るものなり、何事の道に於ても奥の出合所もあり、口を出して善き事もあり此の戦の利に於て何をか隠し、何をか顕はさん、然るに依て我道を伝ふるに誓紙罰文抔と云事を好まず、此道を学ぶ人の智力をうかゞひ、直なる道を教へ、兵法の五道六道の悪き所を捨させ、自づから武士の法の実の道に入り疑ひなき心に成る事我兵法の教の道なり、能能鍛錬すべし、


 

右他流の兵法を九ケ条として風の巻に荒増し書付る処一々流々口より奥に至るまで定かに書顕すべきことなれども、わざと何流の事とも名を書しるさず、其故は一流ゝゝ其れゝゝ存分有るものなれば同流にても少々心の異るものなれば、後々迄の為めに流名なども書のせず、他流の大体九つに云分けて世の中の道人の直なる道理より見れば、長きにかたぶき短きを理にして、強き弱きと傾ぶき、粗き細かなると云事も皆偏なる道なれば、他流の口奥と現わさずとも皆人の知るべき義なり、我一流に於いては太刀に奥口なく、構へに極りなし、唯心を以て其徳を弁ゆること是兵法の肝心なり、

 


二刀一流の兵法の道空の卷として書顯すこと

空と云は物毎に形なき所、知れざる事を空と見立るなり、勿論空は空にして無なり、有る所を知りて無き所を知る、是空なり、世の中に於て惡敷く見れば、物を辨へざる處を空と見る處實の空にあらず、皆迷う心なり、此兵法の道に於ても武士として道を行うに士の法を知らざる空にはあらず、色々迷ひ有て詮方なき處を空と云なれども、是實の空にはあらざるなり、武士は兵法の道を慥かに覺え、其外武藝を能く覺え武士の行ふ道にも暗からず、心の迷ふ所なく、朝々時時に怠らず、心意二つの心を研き、觀見二つの眼を磨き、少しも曇り無く迷ひの空の晴たる所是れ實の空と知るべきなり、實の道を知らざる間は佛法によらず世法によらず、己れゝゝは慥か成る道と思ひ善き事と思へ共、心の直道よりして世の大がねに合せて見る時は其身其身の心贔負、其目ゝゝのひずみによる、實の道には背く物なり、其心を知て直に成る所を本とし、實の心を道として兵法を廣く行ひ、正敷明に大き成る所を思ひ取て、空を道とし道を空と見る所也


空有善無惡 

智者有也
理者有也
道者有也
心者空也


正保二年五月十二日
新免武藏守玄信

 

            

A deeper analysis of the book itself:
Book of Five Rings - One ring at a time